リーダは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま by 増田 弥生、金井 壽宏



リコー、ATTとのジョイントベンチャー、リーバイス、米国ナイキのグローバル戦略人事で活躍するという、日本人としては稀なキャリアを持つ増田さんの話を中心に、神戸大学の金井教授(組織行動)が解説を加えた本です。
増田さん自身の飾らない自然体なリーダシップが、会社や組織にもたらすものが、少し理解できたような気がします。
誰でもリーダーになれ、社員全員がリーダシップを発揮することが組織を変えるのだと。また、自分ができること(doable)だけでなく、自分がいることでもたらされるもの(Deliverable)は何だろう?と振り返るきっかけを与えてくれる本だと思いました。

【リーダシップ】
・誰でもリーダーになれる。誰でもリーダーであったほうがいい。リーバイスは「社員全員にリーダシップを期待し」「普通の人が発揮するリーダーシップ」を意識している。リーダーが多すぎると大変ではないかと勘違いする人がいるが、缶けりやバケツリレーが出来る人が組織に多くて困ることはない。(P.14)
・我を通しすぎるのはよくないが、入社1年目からでも、上司や先輩の言うことを聞きつつ、自分らしさも出して、会社や組織のために貢献することはできる。従来のやり方を批判するだけだったり、職場のダイナミクスを壊したりするのではなく、自分の考えをちゃんと言語化して、勇気をもってイニシャティブを発揮できる若い人も育っていると思う。(P.19)
・変化がある世界の中で組織に変化を起こすのがリーダーであり、リーダーシップ。(P.22)
・世の中がグローバル化するとともに多様化しており、過去において成功したやり方が今では通用しないというケースも多くなっている。だからリーダーシップが必要。(P.23)
・リーダーシップは他人のものでなく、自分のもの。専門家から教わったり本で読んで多少は学ぶことはできても、その人自身が自分で仮説を立てて行動を起こし、継続的に実践し、ときどき立ち止まって振り返ること以外に身につけるすべはなく、高める方法はない。(P.26)

【ラインホールド・ニーバーの祈り】
 神よ
 変えることのできるものについて、
 それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
 変えることのできないものについては、
 それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
 そして、
 変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
 識別する知恵を与えたまえ。

【行き当たりばっちり】
・キャリアは節目では自分でデザインした方がいいが、ずっとそのようにできるとは限らない。流れに身を任せつつ、気がつくと流れの勢いに乗っているというようなキャリアの進展の仕方がある。J・クランボルツの言う「計画された偶然性」、神戸大学MBA金井ゼミで言う「行き当たりばっちり」が生かされている。(P.61)

【僥倖、シンクロニシティ】
・自分で支配し過ぎないことも大事なのがキャリアの機微だ。キャリアがうまく回っている状態を僥倖(私は知りませんでしたが、思いがけない幸い。偶然に得る幸運のことだそうです。)と言わなければ、ほぼその別名であるシンクロニシティ(因果関係で説明は難しいが、同じときに、興味ある出来事が相互に符号する形で現れること)だと思えてしまう。(P.63)

【リーバイスのアスピレーション・ステートメント】 by ボブ・ハース会長兼CEO 1980年後半
われわれは、社員たちが誇りをもって仕事に専念できるような会社を目指します。それは、派閥や学歴に関係なく、誰もがその能力に応じて貢献し、学習し、成長し、昇進するチャンスが保証されている会社です。
われわれは、社員たちが例外なく個人として尊重され、公平に処遇され、その意見に耳が傾けられ、一緒に参加し、貢献しているという意識を抱けることを願っています。そして何よりも、達成感、友情、ワークライフバランスによって満足感を得、また努力することの喜びを見出せることを望んでいます。(P.69)
・1990年代初頭に、様々な企業がビジネスプロセス・リエンジニアリングに取り組んでいた。リーバイスもBPRに熱心な企業の一つだったが、特徴的だったのは、BPRに「人の心」を取り入れようとしていたこと。(P.65)

【蛇口の話】
幕末に日本の武士の使節団がヨーロッパを旅しました。ホテルに泊まった一行が何より驚いたのは、洗面所の蛇口をひねると、きれいな水が出てくることでした。「国元では井戸からくみ上げているのに、さすがにヨーロッパは違う」と武士たちは一様に感心しました。そしてそのうちの一人が「蛇口」を山ほど買い集めて帰国したというのです。(P.117)
リーバイスを卒業したフリーター時代の増田さんは「蛇口売り」にはなりたくないと思い、耐久消費財を買うときだけw講演などのバイトをしたという。(P.171)

【付加価値とは何か?】
付加価値とは何かを考えるとは、デリバラブル(deliverable)発想になるということである。日本人の人事部門の人、特に一般人事の人は、人事の仕事について聞かれると、しばしば採用・配属・評価・給与・労務、はては裁判まで、「やっていること」「やろうとすればできること」を並べる。これはデゥアブル(doable)発想だ。デリバラブル発想の人事とは、自分がいることでラインマネジャーに、社員たちに、会社のビジネスに、ひいては顧客に「何がもたらされるか」を考えるということだ。(P.122)

【彼女は一味違う。だから取らなきゃ "She is diffrent. That is why we need her."】
・増田は「もしこの地球上からナイキという会社がなくなったら、人類は何を失いますか?」とダボス会議から帰ったところのチャーリー・デンソンに質問した。
・向こうの上層部があえて異質な存在を採りたいと腹をくくっている以上、私もまた自分らしさや自分のやり方を持ち込んでこそ、新たな価値が生まれると考えた。「ありのままの自分を出せばいいのだ」と気楽に考えるようになった。(P.138)

【リーダシップの決定的瞬間】
「成果」と「主な役割」を言語化し、自分がいなかったら会社はどうなるかということを考えて言葉にし、上司に示した。「何をするか」でなく「どういう状態になっているか」というゴール達成イメージを宣言することで、必要な方策が立てられる。(P.151, P.175)

【失敗を祝福する風土】
リーバイスには、誰かが失敗するとそれを自ら開示し、聞いた人は「そう、気付いてよかったね」と祝福してから「ダメージをどう回復するの?」「次にまた似たようなことが起きたらどうする?」「私に何かサポートしてほしいことはある?」などと尋ねる文化があった。(P.156)

【C-3POでなくヨーダに】
頼まれたことは何でも献身的にこなすけれど、自発的に何かをすることのないC-3PO型のHRの人は、自らリーダシップを発揮するのを遠慮しがちですが、そのままでは組織にプラスの効果をもたらせません。
これに対し、ヨーダ型のHRは、あまり動きまわらず、一見のんびりしているように見えますが、人々に勇気を奮い起こさせ、可能性を思い出させるような形でリーダシップを発揮します。(P.160)

【普通の管理職のリーダシップ】
「自然体」だとよく言われるが、素直に自分のあるがままでいようとしているだけ。ありのままの自分を脚色せずに

本書は最後に問題を出して終わります。

【第1問】初対面の人に自己紹介するとしたら、自分のことをどのように説明しますか?
(但し、国籍、年齢、出身地、家族構成、名刺や職業経歴にはふれない)

【第2問】現在、会社から自分が去ったとしたら、職場から何が失われますか?

【第3問】あなたが会社を今すぐ去ることになったとします。
5年後、あなたは会社に何を残した人物として紹介されたいですか?

【第4問】あなたは故郷を離れて都会で働いています。
久しぶりに実家に戻り、おじいちゃん、おばあちゃん、甥っ子、姪っ子に
「今どんな仕事をしているの?」「何をする仕事なの?」
「どうしたらその仕事ができるようになるの?」
「もし誰もその仕事をしなかったら世の中はどうなるの?」と質問されたらどうのように答えますか?

コメント

このブログの人気の投稿

分譲マンションの全戸加入型インターネットとフレッツ光の 上手な共存方法があった!

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙, Letters from a businessman to his son.