予想通りに不合理 by ダン・アリエリー, 2008.11



アマゾン・コムでベストブックス・オブ2008だったみたいです。著者は全身の7割にも及ぶ瀕死の火傷を負った人みたいですね。行動経済学って、私の知らない世界のようで・・・。面白がって読んでます。言われてみれば、なるほどそうだねと、結構役に立つかも。

マクロ経済で説明できない時代となり、行動経済学が注目されてるんだと知りました。
教科書を信じて真面目に努力してきた人は、説明できないと不安なんだと思います。不合理性を解説するってのは、そもそもどうかと思いますが・・・。私は「未来が教科書に書いてるわけないじゃん」と思います。人がなぜ不合理な行動をするか?は、購買者の気持ちに「棲み付いて」考えると、子どもでも知ってるかもしれませんね。


【要約メモ(途中飛び飛びです)】


「なぜあらゆるものは---そうであってはならないものまで---相対的なのか」
 ・我々は選択視野だけの範囲で比較/選択する傾向がある。(新聞のweb版、三台のテレビ、レストランのいちばん高いメニュー)
・特性Aと特性Bそれぞれ同じ程度に優れたものから比較/選択する場合、これにAより少し劣る製品C(おとり)を加えることで、CとAの比較で製品Aが引き立ち、相対的にBよりも製品Aの良さが際立つ。(朝食無料サービス付きのパリとローマの比較なら、おとりとして朝食無しのローマを加えることで、ローマが選ばれる確率が上がる) なるほろ!

2.需要と供給の誤謬(ごびゅう)
「なぜ真珠の値段は---そしてあらゆるものの値段は---定まっていないのか」
「刷り込み(アンカリング)」
・卵からかえったばかりのガンのひなは、初めて見た動く物体に愛着を持ち、成長するまで忠実に物体を追い続ける。
・人間もアンカリングに関してガンと似た習性を持つ。
・'73年頃、タヒチの黒真珠は販路も需要もほとんどなかったが、ニューヨーク5番街のショーウインドウに飾り、豪華なグラビア雑誌に全面広告を出し「世界最高級の宝石」とアンカリングすることで、とんでもない高級品に変わった。

「恣意の一貫性」
・例え最初の価格が「恣意(でたらめ)」的でも、それがいったん私たちの意識に定着すると、現在の価格ばかりか、未来の価格まで決定づけられる。
・ひとつのカテゴリーについて出してもいい金額が決まると、同じカテゴリーの別の品物にいくら出すかも、最初の価格(アンカー)との比較で判断される。('98年のワインより'96年に多くを、トラックボールよりキーボードに多く出す。3千ドルの57インチハイビジョン液晶TVを買おうと決めた瞬間、この決断がアンカーとなり、この先ずっとハイビジョン液晶TVはこの価格との比較で判断される。)
・最初の決断は、のちのちまで余韻を残す。

「自分自身に群れつどう」
・レストランに人が並んでいると「きっといい店に違いない」と(善し悪しの判断をしないで)自分も並んでしまうことをハーディング(Herding)という。
・自分が前にとった行動をもとに、ものごとの善し悪しを判断することを「自己ハーディング」という。要するに一度列の先頭になってしまえば、その後の経験でもと自分の後ろに並んでしまうこと。
・スターバックスは、この特性を巧みに利用している。(入店経験が他と違ったものになるように、できることは全てやってる。ダンキンドーナッツよりはるかに高価、高級な雰囲気、煎りたてで高品質な豆の香り、しゃれたコーヒーメーカ、陳列ケースの見栄えのするアーモンドクロワッサンやピスコッティやら、店までの距離。一度入ると二度三度入り、いつのまにか価格帯があたり前になり、プラペチーノ/マキアートと横すべりし・・・ハーディングで習慣になってしまう。職場の無料コーヒーや、ダンキンドーナツの安いコーヒーを飲むかわりに、スターバックスで出費をし続けるべきなのか?という疑問も湧くことはない「過去に何度も同じ決断をしてきたのだから。これこそ自分の望むお金の使い方だ」と信じ込んでいる)

「マイナスをプラスにする」(トムソーヤーのペンキ塗り)
・塀のペンキ塗りを言いつけられたトムが「これが雑用だって?俺たち子どもがそう毎日やらせてもらえることじゃないだろう?」と友だちをそそのかし、代わりをさせ、友だちは面白さを発見してしまう。挙句、友だちはトムにお金を払ってまで変わってもらおうとする。

「不合理な行動への抵抗方法」
①まず習慣に疑問を持つ(自らの弱点を自覚する)
②この習慣からどれだけの満足を得られるか自問するーー「思ってた通りの満足があるか?少し節約して他に使った方がよくないか?」
③これから先長い間同じ決断をし続けそうなことがら(服装、食べ物等)について、最初に決断をする時にも注意が必要。
・かつては合理的だったことも、今合理的とは限らない。
・ひとたび昔の選択を考え直せば、新しい決断に、そして新しい一日の新しいチャンスに気持ちを向けられるようになる!

「需要と供給の力」
・経済学では、生産量(供給)と購買意欲(需要)で価格が決まるとされている。いかし実社会では、消費者が支払ってもいいと考える金額は操作出来る。消費者は支払意思額をコントロール出来ていない。
・経済学では、需要と供給は互いに独立しているとされているが、実社会でのアンカリングは、希望小売価格/広告価格/マーケィテング/製品の市場投入などから作られるもので、全て供給側の変数である。消費者の支払意思が市場価格を左右しているのでなく、市場価格そのものが消費者の支払意思を左右しているように見える。これは需要と供給が完全に独立してるとは言い難い。

「自由市場とアンカリング」
私たちがたまたま遭遇した最初のアンカーに影響されることが少なくないとすれば、私たちの選択や売買は、必ずしも正確にそれから得られる「満足」や「効用」を正しく反映しているとは言い難い。言い換えると、個々の品物から得られる満足度を必ずしも反映しない決断を市場で行っている場合が多い。
もし恣意的なアンカーにたびたび従ってしまっているなら、売買のチャンスがあっても、より幸せになれるとは言いきれなくなる。たとえば、最初の良くないアンカーのために、ほんとうは多くの満足を与えてくれるものを、それほど満足を与えてくれないものと交換してしまうかもしれない。

「市場の力と自由市場がいつも市場をうまく調節できるわけではない」この前提を受け入れるなら、政府がもっと大きな役割を果たして、たとえ自由企業体制を制限したとしても、部分的に調節するべきなのかもしれない。

3.ゼロコストのコスト
無料だと失うものがない。失敗の可能性がない。ついつい釣られて(本当は必要なものがあったのに)必要ないものを買ったり、より有利な取り引きを見落してしまう。(チョコの交換、Amazonの送料無料、無料のコーヒーの列に並ぶ 等)
この本が「フリー」に影響を与えたのは間違いない!

4.社会規範のコスト

人の心遣いや親切等の社会規範はプライスレス。お金には換算できないし、換算すると大変なことになる。わたしたちは「社会規範が優勢な世界」と「市場規範が規則を作る世界」の両方に生きている。社会規範は、ほのぼのと、どちらもいい気分になりすぐにお返しする必要はない。

5.性的興奮の影響

6.先延ばしの問題と自制心
米国の貯蓄率は急激に下がっておりマイナスに達している。(25年前は2桁台 → '94年に5% → '06年にはマイナス1%である。ヨーロッパは平均20%、中国は50%)
原因①「アメリカ人が過激な消費者主義に屈したことではないか?」

・今のように何でも持っていなければ気が済まない風潮がなかった時代の家は、物置の大きさからして今より全然小さかった。
原因②「近年の信用販売の急増」

・アメリカの平均的家庭は、クレジットカードを6枚持ち。恐ろしいことに家族カードの負債額はおよそ9000ドルにも達し、7割の家族が食費/光熱費/衣服費をクレジットカードの借金でまかなっている。


「貯金をすべきだとわかっているのに、何故できないのだろう?」
「何故、お金が溜まるまで、買い物を先延ばしにできないのだろう?」
「何故新しいものを我慢できないのだろう?」
「お金を貯めよう」「運動し食事にも注意しよう」と誓う時、私たちは冷静な状態にある。しかしその後、熱い感情の溶岩流が押し寄せて来る。

・ある時MITで3つのクラスの成績を比較する実験をした。成績は①②③の順番で矯正する方が成績が良かった。①強制的に納期を与えたクラス ②予め自分で納期を決めさせたクラス③納期なしのクラス


「決意表明すれば、なりたい自分になれる!」
最善の策は、人々に望ましい行動の道筋を予め決意表明する機械を与えること!


「医療分野での応用」
いかにして予防医療を徹底できるか?
・法律で強制?
・自発的な締め切り、例えば前もって100ドルを集金し、予定日に受診したら返金する、要検査の人に主治医が「前もって予約金100ドル払うか?」と聞くとか。
・車検みたいにパックにして受けやすくする?


「貯蓄分野での応用」
・浪費をやめるよう厳命する?
・水の入ったコップにカードを入れたまま凍らせる?w
・匿名blogでクレジット債務状況を公開する?


7.高価な所有意識
「保有効果」
大抵のものは、物を所有しているというだけで、持ち主にとってそのものの価値は高くなる。

「三つの不合理な奇癖」
①自分が既に持っているものに惚れ込んでしまうこと。
何かを手にしたとたんに愛着を感じ始める人間性の力。
②手に入るかもしれないものでなく、失うかもしれないものに注目してしまうこと。
大切な所有物を手放そうと考えたとたん、もうそれを失うことを悲しみはじめる。
③他の人が取引を見る視点も自分と同じだろうと思いこんでしまうこと。

「IKEA効果」

・何かに打ち込めば打ち込むほど、それに対する所有意識は強くなる。家具組立、育児等、手間がかかるほど、所有意識は強くなる。→1回だけ娘にIKEAのタンスを作ったことがありますが、あれって結構大変な作業ですよね^^; 30kg位あって、すげー重かったしw 釘打ったりして結構愛着沸くんですよね。

「仮想の所有意識」

・オークション等で最も長く最高額をつけていた人ほど、所有意識が強く、最後まで競り合いしやすくなる。
・幸せそうな夫婦がBMWコンバーチブルでカリフォルニアの海岸線を走るのを見て、そんな自分の姿を想像する。アウトドア
・ウェアのカタログを手にすれば、フリース製のプルオーバを見て、あっという間に自分のもののように思い込む。
→まだ何も手に入れてないうちから、部分的な所有者になってしまう。仮想的な所有意識が広告業の推進力の一つになっている。

8.扉をあけておく
・私たちは「常に多くの扉を開けておこうとする」たとえ全体のパフォーマンスが下がろうが「価値のない扉でさえ完全に閉じるには大変な決断を要する」
・安売りしている商品を見て、本当にそれが必要だからでなく「パーゲンが終わる頃には全て売れてしまって二度とその値段では買えなくなる」という理由で、特売品を何度買ってしまっただろうか?
・一方で、本当に消えかけているとても大切な扉があるのに、私達がそれに気付かず、その貴重な機会を逃したことだろう。(息子や娘の子ども時代、妻の笑顔;;)
・著者自身もMITからスタンフォード大へ移るかどうかで迷い、仕事に支障が出たことがあると告白している。

9.予測の効果

10.価格の力

11.わたしたちの品性について

12.わたしたちの品性について

13.ビールと無料ランチ

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