シロートのおっさんが、ケースの授業に参加してみた

Twitterでいろいろ眺めていると、高見の人の息づかいまで聞こえてくる感じがします。
自分の目に止まった人が誰をフォローしてるのか?って調べてフォローしてみると、更に「へぇーこんな人が居るんだなー」「こんなことやってるんだなー」ってね。
そんなこんなで、私はまったくのシロートなんですが、実際にMBAでやってる(らしい)ケースってのに興味(というかコンプレックスか?)があったので「実際にどんな感じなのかな?」ってのを確かめてみたくて、会社を半休して参加してみました。(だって平日夕方なんだもの)
中原淳先生主催の「ラーニングバー」ってやつです。なーんと場所も東大!ですwww
参加までの経緯はこちら ご本家のレポートはこちら

会場は満員御礼で(確か250名だったかな?)大変な熱気でしたよ。おっさんもいっぱいいたしねw。

ケース「 LBマテリアル社」の考え方 by 酒井穣さん
酒井さんは「溢れるポケット」から、いろんな知恵を惜しげもなく授けてくれて、話がわかりやすくて面白いし、ほ~んとありがたい人だと感じています。
今回の授業をうけてみて、学問のための学問でなく、「実務でこうやって使えるんだよ」「こういうふうに当てはめてみると浮かび上がってくるだろ?」って、おっさんにもわかる言葉で解説してくれます。


設問1)問題点を3つあげなさいの考え方の解説は以下のようなものでした。
問題を羅列するときの軸の取り方
ものごとを満遍なく考えるために、網羅性(MECE)を出すように「モレなく、ダブリなく」考えるのだとわかりました。MECEって、こういう風に使うのだと、今頃気が付きました。
今回のケースでは、以下のような枠で捉えることができるみたいです。また、網羅性さえとれていれば、3つの選択肢は何でも良いとのこと。
・3C(Company, Competitor, Customer)
・経営資源(ヒト、モノ、カネ)
・人材要件(マインド、スキル、ナレッジ)
・内部サプライチェーン(購買、製造、販売)
・マーケティングのSTP(Segmentation, Targeting, Positioning)等
・企業理念、ビジョン、戦略など
【分析の例 by 酒井穣さん】 ※「回答ではないので注意」とありますので、念のため
現在地(現状)
目的地(あるべき姿)
Company
理念
農業事業部に残っているようだが、検査事業部とシェアできていない
浸透の度合いを測定したい。1つの企業体として事業部間で理念がシェアできていないのであれば、分割・売却も有り得る。
戦略策定
現場の声はもちろん、人材育成担当者の意見(学習と成長の視点)も反映されていない。
10日間という短期間で策定できるかという議論はともかく、より多くの人を巻き込んでの策定(BSC程度はカバー)が常識。「自分の持ち寄った具の入っているカレーはウマい」。
アセスメント
農機事業の海外営業部に求められる人材要件ができていない。
人材の要件定義を実施(おそらく、全社的に出来ていない)。
育成
エース高橋ですら5年で一人前という遅さ。B社は、創業3年未満で競合になっている現実を考えると、ベンチマーキングをするまでもなく遅いと言えそう(ここから全社的に人材育成が現場に放置な状態になっていると予測される)
5年→2年以内としたい。また全社の人材育成を競合他社とベンチマーキングしたい。
感情面
花形となったら突然。そのポジションは社長派が取ってゆくのか?
わざわざ、農機と検査が敵対するようなことはしない。きちんと配慮。
Competitor
A社
価格(Price)、性能(Product)で勝っているが、チャネル(Place)、プロモ(Promotion)で負けている。
海外チャネル戦略とプロモにおいても勝つ(もしくは、このどちらかで勝つ)。
B社
成熟産業において有り得ない低価格で参入する企業には「イノベーションのジレンマ」の可能性がある。
驚くべき低価格の理由を解明する。その結果、本当にイノベーションであれば、特許を分析した上で、買収を検討する。
X社
買収話を持ちかけてきたのは、もしかしてA社なのでは?シナジーがキレイにはまる。
買収を持ちかけてきた先を特定したい。また買収すると自社の企業価値が上がるようなターゲットを選定しておきたい。
Customer
耕運機が欲しい顧客もいるということしか分からない。本当に求められる機能は?「消費者がドリルを買うとき、消費者はドリルが欲しいのではなくて、穴が欲しいのである」(セオドア・レビット)
実際に顧客の仕事を観察して、顧客の求める機能を明らかにする。「もし私が顧客に、彼らの望むものを聞いてきたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう」(ヘンリー・フォード)
「戦略とマーケティングの問題」だけで片付けない
「何が当たるか解らない」今の時代では、精密なマーケティングが伝家の宝刀ではないと考えられているようです。もしマーケティングが不足していると考えるなら、具体的にどのような調査が必要なのか?まで明示するべきとも。
実務でも「もっとマーケティングを」「精密なマーケティングを実施したのか?」とか
「結局、いくら儲かるんだ?」という事業の「殺し文句」が使われがちですが、事業の立ち上げ時期における情報の不足は、もはや常識とのことでした。
※プロジェクト・マネジメントの理論体系(PMBOK)においては「段階的詳細化」と言われるそうです。酒井穣さんポケット大杉w
「神の目線から」自由になる
ケースは、基本的に状況全てが網羅された形で記述されているので、どうしても分析が大局的(=神の目線)になってしまって、意見に血が通いにくいものらしいです。ですから、特に意識して「当事者意識を持って」考えることがとても大切とのことでした。石井淳蔵氏(流通経済大学学長)は、哲学者ポランニーがいう「対象に棲み込む力(対象との距離をできるだけ縮める)」ようにせよと言ってるそうです。
私も最近意識して「もし自分がお客さんだったら、どう考えて、そうしたんだろう?」って感じで考えるようにしています。
※石井淳蔵氏の「ビジネス・インサイト」を読んでみたのですが、科学者だったポランニーは哲学者に転向してまで言わんとした「知の暗黙の次元」とか「対象に棲み込む」が少しわかったような気がしています。石井氏は「暗黙に認識する力」と「対象に棲み込む力」により「ビジネス・インサイト(新たなビジネスモデルがひらめくこと)」が生み出されると言っておられるのだと思いました。
ヒットフォール ※言葉の意味がよくわかりません。ヒット判定? ひっかけ?
売上高だけの比較で、一概に農機事業部の方が検査事業部よりも非効率とは言えない。このケースでは利益が意図的に隠されているだけでなく、農機事業の利益が高いことが示唆されている。ケース中には記述されてないけれど、半導体事業っていうのは研究開発投資や設備投資もハンパじゃなく、シリコンサイクルの波の影響も強く受けるため事業単体ではなかなか存続しにくい特徴があるのだそうです。確か、酒井さんは以前に半導体業界のご経験があったはずなので当事者としてよくご存知なのでしょうね。
関根(人材開発担当)の分析
設問2)関根は今、何をするべきか?を考えるに「社内・外の他者にどう働きかけるべきか?」という視点だけでなく「関根本人は、どうあるべきか?」の視点も踏まえ分析しています。













現在地(現状)
目的地(あるべき姿)
マインド
課長にもなるのに、初めての社内公募というだけで、必要な人材の要件も(おそらく)不明確なまま、ワクワクしてしまう
・農機の海外事業がもたらす「結果への責任感」(自分の進退をそれにかけるぐらいの気持ち)を持たないと、各種の人材育成を入れ込む「説得力」が得られない
スキル
社内の情報はそれなりに入るようだが、エース高橋の現状もあまりよく理解していない
・タレント人材管理(高橋など)
・企業文化(人的ウェット)統合(農機事業部、検査事業部、および買収後の統合)を管理できるスキル
ナレッジ
課長にもなるのに、事業理解が甘く感じられる
・自社の事業をできる限り広く、深く理解する
・アジアの農家に関する知見(休日に自腹1でも良いので、とにかく早く文献を集めた上で、現場を視察してくること)
・異文化マネジメントの知識
・戦略設計者として、戦略の策定に関与できるレベル2

1.今の関根が会社費用で出張するとなると、関根よりも先に行くべき人がいるという話になりがちなので、個人的に見たかったという理由で、早くこのナレッジ・ギャップを埋めておくべきというのが本当の理由。
2.戦略も設計も人材プロフェッショナルに求められるコンピテンシーである。詳しくは「人事大変革」P.118などを参照。
HR戦略アセスメント 「人事大革命 by デイヴ・ウルリッチ他」
ビジネスの現状とステークホルダーからの具体的な期待を理解する(P.19より)
・HR戦略とビジネス戦略の間に整合性を保つという議論には全面的に賛成する。
・さらに進んで、HRリーダたちはビジネス戦略の理解だけにとどまらず、その戦略を形作っているビジネス条件や外部の現実の姿をその戦略を通して観察し、理解することも勧めたい。
・一般的に戦略とは、人事部門がその投資内容を反映させる鏡のような存在と言える。その鏡を通して、戦略の前提条件をしっかり理解するために外部の顧客や投資家の考え方を把握すべきだと考えている。
・このように、外部環境の構成員とHRを理解し、結びつけることによって、社内のみに目を向けたアイデアや概念をひたすら追いかけるという間違いを犯さずに済む

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