「経験学習」入門 by 松尾 睦
同じ経験をしても、人によって成長の度合いが違うのはなぜなのか?
著者(神戸大学大学院 経営学研究科の教授)は、「挑戦し(ストレッチ)、振り返り(リフレクション)、楽しみながら(エンジョイメント)行動すること」に違いがあると言っています。
本書では、成長のメカニズムについて詳しく解説し、「成長の差がどこから生まれるのか?」「どうすれば。より成長できるのか?」等について、実際の調査やビジネスマンにとって身近な具体例を用いて解説しています。5-6章では、実用的なOJTや、チェックリスト等、ビジネスに即利用できるツールまで紹介されており、実用性満載です。
最近の経営学はメチャクチャ実用的なんだと、驚きました。
【要約メモ】
第1章 成長とは何か
-自分への思いから、他者への思いへと視点を広げる
- 成長には、能力的成長と精神的成長がある。
- プレイヤーとしての成長とマネジャーとしての成長は異なる。
- 成長し続けるためには「学びほぐし(アンラーン)」が必要になる。
第2章 経験から学ぶ
-「良く考えられた実践」が成長を促す
- 人は、直接経験と間接経験から学んでいる。
- 経験は与えられる側面と、自ら創り出す側面がある。
- 人は、経験学習サイクルを回すことで学んでいる。
- よく考えられた実践は、経験学習サイクルを活性化させる。
第3章 経験から学ぶための三つの力
-挑戦し、振り返り、楽しむための方略
- ストレッチ:足場形成
- 挑戦のための土台作り
- 周囲の信頼を得る
- できることをテコに挑戦
→「ストレッチ」は、挑戦的な課題に取り組むことだが、実際の職場では仕事を選ぶことはできない。優秀なマネージャは、むしろ高い目標に挑戦するための足場づくり、つまり挑戦の準備作業をしていた。足場ができれば、めぐってきた挑戦をとらえることができ、仕事を引き受けることができるから。
- リフレクション:進行形の内省
- 行為の中で内省
- 他社からのフィードバック
- 批判にオープン
→「リフレクション」とは、自分の行動や経験を内省し、振り返ること。優秀なマネージャは、過去にこだわったり、閉ざされた中で内省するのではなく、進行形の内省をしていた。つまり、行動の最中に内省したり、内省材料であるフィードバックを他者からもらったり、批判にオープンになって未来へ向けて内省していた。
- エンジョイメント:意味発見
- 面白さの兆候を見逃さない
- 仕事の背景を考える
- 達観し、喜びを持つ
→「エンジョイメント」とは、やりがいや関心を持って仕事に臨み、達成感や成長感を味わう力。調査でわかったことは、自分の興味や関心を追求するというよりも、仕事をする中で意味を発見することが大切。そのためには、仕事の背景を考えたり、面白さの兆候を見逃さない姿勢が求められる。
第4章 「思い」と「つながり」
-三つの力を高める原動力
「思い」について
- 仕事の信念としての「思い」は、経験からの学びに影響を与える。
- 「仕事への思い」と「他社への思い」が融合するとき、大きな成長のエネルギーとなる。
- 自分への思いには、認められたいという「業績目標」と成長したいという「学習目標」がある。
「つながり」について
→「外部性(職場外の関係)」、「誠実さ」、「積極的(自ら発信する)、「受容性(相手を受け入れる)」が、発達的なつながりを作るキーワード
- 職場外から素直な意見を聞く
- 人を選び、誠実につきあう
- 自ら発信し、相手を受け入れる
第5章 学ぶ力を育てるOJT
-育て上手な指導者のノウハウ
学ぶ力を高めるOJTのあり方。
- 育て上手の担当者は「目標のストレッチ」、「進捗確認と相談」、「内省の促進」、「ポジティブフィードバック」に力を入れている。
- 若手の発達段階によって、指導方法を変える必要がある。
- 新人を「放置」したり、2-5年目の若手の目標を「ストレッチしすぎる」と人材をつぶす危険性がある。
第6章 学ぶ力を高めるツール
-チェックリスト、カルテ、キャリアシート
- 経験から学ぶ力のチェックリストで自己診断、他者診断をする。
- 経験学習カルテで、経験から学ぶ力を高める。
- 経験キャリアシートで経験を振り返り、職場で経験を共有する。
- 経験学習の事例集を作り、経験学習のパターンを明らかにする。
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